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2016/07/31

ラジオダクトによる地デジTVの受信障害とアマチュア無線V/UHF DX通信の関係(考察)

 

昨年夏、満を持して建てた地デジアンテナでしたが、時々受信障害が起きることに気が付きました。受信障害発生時の季節、時間帯には依存性があり、特に春から秋にかけて気温の高い日の午前(6時から9時ごろ)、午後(17時から19時ごろ)を中心に発生することが多いのです。

現在私の家は静岡県の標高約300mの地点にあり、スカイツリーからの電波を直接受信できる場所にあります。

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スカイツリーまでの距離は約100㎞で、関東ネットの放送局はすべて受信可能です。気温が急に上がった日の早朝または夕方に特に東京MX(16ch)、フジテレビ(21ch)、TBS(22ch)、テレビ東京(23ch)で受信障害が発生することがあり、特にMXとフジテレビで頻繁に発生します。現象的には周波数の低いチャンネルで頻度が高い、といえるのかもしれません。

スカイツリーからの地デジ放送波は16ch~27chで周波数としては488~560MHzです。自宅からスカイツリーまでの高度プロファイルはGoogle earthで知ることができます。

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私の家から数キロのところに尾根があり、標高で20mほど高くなっています。スカイツリーはご存知の通り、高さ634mありますが、Google earthではいろいろやってみましたが、スカイツリーを実際の高さに設定して表示することはできませんでした。見通しを遮蔽している尾根部分はレーザービーム状に正確に表示されるようです。

path_google2

スカイツリーの送信アンテナ部分は600m付近と仮定すると、自宅との標高差は300mくらいなので、この表示より到来電波の角度は尾根部分で20mほど高くなるはずで、地デジ波は実際にはほぼ尾根をかすめて見通しと言えそうです。鎌倉、横浜付近が多少標高が高くなっていますが障害になるものは全くないと思われます。

総務省の情報で「電波の異常伝播によるテレビの受信障害」として以下のように説明されています。

「電波の異常伝搬による受信障害は、大きく分けて、スポラディックE層によるものとフェージングによるものがあります。
スポラディックE層によるものは、国内又は近隣諸国の電波がスポラディックE層という地上約100kmに形成される電離層に、送信所からの電波が反射して遠方まで到達するため、ご家庭のテレビに混信し画面が乱れるものです。。
また、フェージングによるものは、テレビの送信所から受信点までの距離が比較的大きい場合に、電波が伝搬する通路又は通路上の大気の媒質が気象条件などにより変動することによって、受信される電波の強さが変化し、安定して放送波の受信ができなくなる現象です。」

このうち、私が経験している受信障害としては「送信所から受信地点までの距離が比較的大きい場合」に該当していると思われます。

フェージングによる受信障害

「テレビ電波の伝搬経路は、見通し距離においては空間を伝わってくる直接波と大地(海面)で反射されてくる反射波とが合成されたものになり、それを受信することになります。また、見通し距離以外では、回折波または大気による散乱波を受信していることになります。
したがって、回折の状況や反射地点での反射の状況が時間的に変化(海面や電波に対する大気の屈折率等の変化)すれば、フェージング(受信点での電界強度が変動すること)が発生することになります。
一方、大気中の気温や水蒸気の量は、高さと共に規則的に変化しないで、部分的にはかなり不規則的な変化をしていることがあります。
したがって、電波に対する屈折率も場所または時間的に変化することになります。また、 屈折率が大きくなると電波は地表に戻ってきて大地との反射を繰り返し遠くに届くようになります。
これをラジオダクトと言っていますが、大気中でも同様のダクトが発生することがあります。これらの不規則な要因によって電波が正常に届かなくなったり、多重伝搬路が形成され、それらが干渉しあってフェージングが発生したりします。
一般的に海上伝搬や見通し外の伝搬では短い周期、ラジオダクトによる場合には比較的長い周期のフェージングが発生します。地域によっては、ラジオダクトに外国の電波がのってくる場合もあります。ラジオダクトは、湿気の多い夏の夜または日の出ごろに多く発生します。
フェージングによる障害は、VHF帯、UHF帯はもちろんマイクロ波にも及びます。多重伝搬路が形成される障害の症状は、画面が真っ黒になり「受信できません。」等のメッセージが表示される「ブラックアウト」又はブロック状のノイズが現れたり、静止(フリーズ)した画面になるなどが起きることがあります。
送信アンテナから比較的近く、電波の強いところでは発生しませんが、関東地方の場合、東京スカイツリー(東京タワー)からの電波は数10km以遠になると発生しているようです。

フェージングは、原因によって大別すると以下のようになります。

  1. 干渉性フェージング:いくつかの異なった経路を通る電波相互の干渉による。
  2. シンチレーションフェージング:大気中の揺らぎによる細かい変動による。
  3. 拡散乱性フェージング:対流圏散乱波による。
  4. 偏波性フェージング:電離層における反射の際の偏波面の回転による。」

 

すなわち、ラジオダクトによるマルチパス電波の相互干渉という説明です。これは受信状況から考えて的を得た説明だと考えます。

そうだとすれば、アマチュア無線のV/UHF帯でも通常届かないエリアとの交信ができているのではないか?と考えられます。また、原因がある程度分かっていれば予測することができるのではないでしょうか?その答えはなんとアメリカの研究者のWebsiteにありました。

William Hepburn's Worldwide Tropospheric Ducting Forecast

というWebsiteです。全世界のTropo現象の予報サイトです。日本付近は「Select region」で「Far East」を選択すると表示されます。

このサイトをよく読んでみるとWilliam Hepburnという人はプロ気象研究家で趣味としてTVやFM放送の異常伝播に興味をもっていた人のようです。おそらく仕事の知識を生かして、膨大な気象データを収集して予報チャートを自動作成する仕組みを作ったものと思われます。

また、このサイトにリンクとして「Current Conditions by Jon Harder/APRS」というのがあります。こちらはAPRSを利用してGoogle map上にtropoによって記録された遠距離通信を表示しています。Jon Harderは「NG0E」というアマチュア無線家のようで、@ng0eというTwitterのアカウントがありました。

 

実際に私の自宅で地デジ波の伝播異常があったときどうなっているか少し集めてみました。

6月11日 0700JST

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6月11日 2000JST

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7月10日 2030JST

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APRSの実際の通信記録がログとして記録されています。

まだデータは少なくて、確定的なことは言えないのですが、この2か月ほどで見た限り、自宅に一番近いJF2ZGN(伊豆遠笠山)の交信記録と照らし合わせると、144MHz帯ですが、おおむね100kmを超える通信が記録されていることが多いようです。HepburnのIndexも伊豆半島沿いに「5:strong」になっていることが多いようです。

APRSの交信データを解析することによりもう少し正確な情報が得られそうな気がします。また、地デジ波との関連付けをする上では430MHz帯の通信記録が必要と思われます。この情報を得ることができないかどうか、現在研究をしているところです。

グローバルに見てみると144MHz帯で1000kmを超える交信も記録されています。

結論としては、ラジオダクトによるマルチパス電波の相互干渉、抑圧により、域外の同一チャンネル波による受信障害が発生している、ということでした。

現在20素子のアンテナを使用しているので、30素子の強指向性アンテナで、受信障害が軽減される可能性が考えられますが、実際の受信遮断は数分なので我慢しようかと思っています。

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